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視察報告:道後オンセナート2014②

2014年8月30日 9:28 AM
視察報告:道後オンセナート2014②

① 続き
《Hotel Horizontal》は数ある芸術祭でおそらく最も開館時間が短い展覧会です。
見学可能時間は11:00から15:00の4時間のみ。
素直に作品を見て回るとどうしても急ぎ足になってしまいます。
さらに時間交替制、予約制などの制約もあり会場に辿り着いてもすぐに見学できないこともあります。見学時間も短くて10分長くて50分あり、必ず時間どおりに滞在しなくてもよいのですが、やはり部屋の随所にある仕掛けを楽しむためにはそれなりに時間を必要とします。時間に追い立てられる生活は日常世界の話として、ゆったりと道後温泉の時間感覚に浸るのが賢明かもしれません。
次は道後地区の高台に聳え立つちょっと不思議な建物が目的地です。

 

③谷川俊太郎×道後舘《はなのいえ》
建築家・黒川紀章による設計のホテル「道後舘」。オーナー会社が宇和島運輸株式会社であることから船をモチーフに建物がデザインされています。
近代和風建築とモダニズム建築を融合させる姿は時代に先駆けようとするパイオニア精神の現れであり、道後温泉本館を改築した伊佐庭如矢の精神の継承かもしれません。
道後温泉本館改築についてはこちらを参照

そんな「道後舘」が挑むのは詩人・谷川俊太郎氏とのコラボレーション作品です。詩人・谷川俊太郎という名前を聞いて知らないという人は少ないかもしれません。身近なところでは手塚アニメ《鉄腕アトム》のオープニングテーマの作詞が有名ですが、様々な実験的コラボレーション作品も多く手がけており、絵本作品『もこもこもこ』(デザイナー元永定正との共著)やオノマトペを活用した『ぽぱーぺぽぴぱっぷ』(美術家・岡崎乾二郎氏との共著)など遊び心旺盛な作品やパフォーマンスで常に見る人を飽きさせません。80歳を超えても谷川氏のチャレンジ精神はここ道後舘でも衰えることはありません。

道後舘では《はなのいえ》と題した「仕事場」を作品として制作しています。谷川氏としては珍しいインスタレーション作品であり、横浜・象の鼻テラスで実施したワコールアートセンターのキャリアがここに生きています。作品へと変わる部屋はなんと道後舘の最上階にある特別室「貴賓室」です。「ここで谷川氏が仕事をしている」という設定で来訪者に詩人の仕事の雰囲気をゆっくりと様々な角度から楽しんでもらおうとする粋なはからいです。

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室内には本人の雰囲気を残すような自宅の品々を持ち込み、あたかも詩人の別荘といった様相を呈しています。部屋に入って最初に目に飛び込んでくるのは、庭に配された詩のインスタレーションです。

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明るい窓辺に仕事机があり机上には作家の所有物らしきパソコンがあり電源が入ったままになっています。

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デスクトップはセキュリティがかかっておらず、画面上に詩作品のテキストデータが誰でも閲覧できるようになっています。まるで詩人の仕事をのぞき見る感覚です。

机の引き出しにはノート「はなのいえ」があり、部屋を訪れる人は誰でも書き残していけるゲストブックがあります。ゲストブックというと訪問の感想等を記す雑記帳のようなものを想定しますが、ここでは詩人からひとつお題が提示されています。

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ノートを開くと原稿用紙に「はなのいえ」の5文字だけ記述されています。「詩作」というほどでもなさそうですが、「はなのいえ」の文字と上下7マスを用いて言葉遊びをできるようになっています。

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前の人が書いた作品を楽しむのも良いのですが、この部屋の滞在時間はHotel Horizontalプロジェクトで最長の50分です。せっかくですので、慌ただしく作品を見るよりはゆっくり腰を落ち着けてほんの少しだけ言葉遊びの世界を味わってみてはどうでしょうか。
アイディアがなかなか思いつかない場合は、庭を歩いてみるのも良いでしょう。縁側に座って庭に配された言葉から何か新しい言葉を呼び起こされるかもしれません。
また居間に腰かけて映像番組を見ながら考えるのもよいでしょう。DVD映像には氏の往年の実験的朗読パフォーマンス記録が収録されています。

谷川俊太郎氏の映像作品を見るのは貴重な経験です。

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道後舘×谷川俊太郎作品《はなのいえ》はHotel Horizontalプロジェクトのなかで見学料が最も高額の2000円です。
1作品で2000円というのはやや高額で驚かれる方も多いはず。
実際に鑑賞してみての感想は「高いとも安いとも言えない」です。
作品と立ち会う時間が「50分」というのはあまりにも長く感じます。しかし、実際に部屋でくつろいでみるとどうでしょう。あっという間に時間が過ぎて何だか数字が気にならなくなります。とくに部屋についてから居間の座布団に腰かけてしまうと旅行先のホテルについた時のように気持ちがふっと落ち着きます。そこからお茶を飲み、お菓子(和菓詩)を食し、居間で映像を見たり縁側でのんびりしたりしていると、「作品を見に来た」という感覚がほとんど薄れています。ゆったりとした道後ならではの「時間感覚」に包まれながら自然と休憩気分へとモードが切り替わっていきます。そして、気持ちに余裕が出始めたところで手にするのは「はなのいえ」ノート、先人たち(過去の宿泊客)が書き残して行った詩作の足跡を辿っていくと最後に新しいページが現れます。気持ちに余裕をもてると「はなのいえ」ノートにいいアイディアが浮かんでくるかもしれません。
その意味で作品《はなのいえ》は道後温泉という土地が有する独特の空気感や時間感覚を味わう〈仕掛け〉とも言えるでしょう。《はなのいえ》のみならず、道後の空気感は時間とコストという「数字」に支配されがちで何事も効率よく早く処理しようとする我々の生活速度を一気にスピードダウンさせてくれます。ともすれば、温泉街であれば一般的な空気感かもしれないですが、そのゆったりとした時間感覚をより深く味わわせてくれるのがここでの「ことば」の創作という所作になるのでしょう。意味や効率や論理という日常的な生活のシステムにとらわれずに「面白い」という単に感覚の遊戯のための独創的な言葉を編み出すには、既存の意味や論理から自由な状態である必要がある、部屋に配された言葉たちからそんなメッセージを感じます。何事もついつい慌ただしくしてしまう日常的な生活感覚を抑えて非日常に現れるわずかな自由を楽しむために最低50分はゆっくりする必要があるかもしれません。「数字」から「ことば」の世界へ、私たちが気づきにくい世界感覚を垣間見せてくれるひとときです。

見学時間 12:00、13:00、14:00(各回50分)
見学料金 2000円(50分)
見学者特典-お抹茶・オリジナルお菓子「和菓詩」付き
TEL 0120-10-4848
H.P www.dogokan.co.jp/
宿泊予約はこちら

http://www.489pro.com/asp/489/date.asp?id=38000007&room=6&plan=76&user_num=2

 

④谷尻誠×道後プリンスホテル《Sketch》

道後オンセナート2014は様々な分野のクリエイター・アーティストが参加しているのが特色です。
道後プリンスホテルでは広島在住・新進気鋭の建築家・谷尻誠とのコラボレーション作品があります。
タイトルは「Sketch」、その名の通り部屋全体をスケッチしたような空間にしています。

部屋の入口は普通ですが、
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入ってみると何と絵の中にいる感じ。

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座布団あたりを注視していただけると実物であるのがわかるかもしれません。

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メディアによく掲載される写真構図です。ほとんど絵にしか見えません。

地元の美術系学生が制作のサポートに入り、作品を完成させたとのことです。
部屋全体が20世紀初頭の絵画のようになっています。
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接近してみても絵画感は消えません。
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トイレやアメニティも丁寧に描画されています。建築家による意外な作品展開に終始感嘆の15分となりました。
かすかに塗料香が残る絵画の部屋も公開は来年の1月までです。

展示期間 2014年4月10日-2015年1月12日
見学時間12:00-15:00(15分)
受付時間14:00まで
見学料金500円+税
お問合せ 089−947−5111
H.P  www.dogoprince.co.jp/

 

今回の報告では以上4作品となります。
最後にもうひとつ作品見学と思いき、「今日は予約でいっぱいです」とのことで見学できませんでした。
ここで15:00のタイムアップ、あとは市街地の作品を見て回るだけとなりました。

 

実際に行かれる方は以下の見学ポイントも参照していただけるとより楽しめるかと思います。

① Hotel horizontalに共通券はなく、宿泊施設毎に費用がかかる(300円〜2000円)。
② 見学可能な時間は11:00-15:00の4時間のみ(短いところは3時間)。
③ 見学混雑を避けるため「予約制」をとっている場所が多い。

公式ウェブサイトには上記情報を記載していますが、事業全体紹介がメインであるため肝心なアクセス情報まで辿りつく方は少ないかと思います。
「これを事前に理解しておけば!」と思った注意点です。下記、詳細です。

① Hotel Horizontalの作品群には共通券(他所で言うパスポート)なるものが存在しません。各施設につき500円〜2000円の見学料金がかかってしまいます。著名なアーティスト作品は1000円以上かかります。推奨したいのは作品のあるホテルに宿泊することです。宿泊客であればそのホテルにある作品は見学無料となりますし、何よりも道後温泉旅館の雰囲気を楽しむことができます。作品部屋にも滞在できますが、料金も「作品」価格(1名あたりおよそ30,000円以上)となるため財布との相談かと思われます。

② 見学時間が短いです。日中で4時間しかありません。それもそのはず宿泊客がチェックアウトしてから部屋の清掃を入れて、次の宿泊客がチェックインするまでの時間設定なのです。作品を一生懸命見て回ろうとするとお昼を食べる時間がありませんし、せっかく風情のある温泉宿に来ているのにバタバタしているのも野暮でしかありません。作品を通して風情を楽しむ、これもまた一興です。

③ 施設ごとで運用が異なるのですが、混雑を避けるために見学に予約制、時間入替制をとっている場所があります。
場合によっては「本日はもう予約で一杯です」と見学を断られる場合もあります。
必ず行きたいところがある場合は予約していくのがベターでしょう。

せっかく四国道後まで来ているので作品も多く楽しみたいところですが、ここは何よりも古来より続く温泉文化を味わうのがよさそうです。
ここ道後オンセナートではすべての作品でホテル専属従業員の方に受付から作品部屋まで案内してもらえます。プロジェクトスタッフではなくおもてなし専門家である温泉宿の方々が迎えてくれます。
ホテルスタッフの皆さんの振る舞いには長きにわたって築き上げられた道後温泉の文化的寛容さがにじみ出ています。
ここで楽しむべきは古きよき温泉宿文化と新しいことに挑戦する人々(温泉宿+アーティスト)の心意気かもしれません。
作品だけではなくその場所や土地に対して新たな知見を深めることが多様な地域で開催される芸術祭の醍醐味でもあるのかと。